④ヒューマンエラーを防ぐ為に

この項目では、 4)ヒューマンエラーを防ぐために、について学びましょう。

1.ヒューマンエラー

①認知・判断・操作

交通事故の要因のほとんどは人のミスです。
もともと人はミスをする生き物ですから、機械のように一定の作業を常に正確に続けていくことは難しく、心理的状態や環境で作業状態は変わります。運転も同じです。
運転は、認知・判断・操作の繰り返しで成り立っています。どの段階でエラーが起こっても事故につながる危険があります。
図の自転車と衝突した場合
認知エラーは、自転車に気づかず見落とした
判断エラーは、自車の方が先に左折できると思った
操作エラーは、停止するためのブレーキとアクセルを間違える が挙げられます。

②ヒューマンエラーの要因

ヒューマンエラーにはいくつもの種類があり、その要因も様々です。
思い込みによるエラー
交差道路から自転車は出てこないと思い込む
知識・技能不足によるエラー
乗用車しか運転したことがない人が、いきなりトラックを運転した「知らない」「できない」エラー
意図したエラー
ルール違反とわかって行うエラー
妨害が入ったためのエラー
ある行為をしようとした時に妨げられ、なすべき行為を忘れるエラー
緊張状態が招くエラー
不安などの緊張状態で動作が先走ること、「早く右折しなければ」の状態から安全確認を飛ばして右折するエラーがあります。

◆「急ぎの心理」に陥りやすいとき

運転していると、「先に進みたい」急ぎの心理が働きます。
・出発が遅れた時
・初めての運行経路で道に迷った時
・事故や渋滞に巻き込まれた時
・ノロノロ走る車に追従した時
・踏切や信号待ちで停車した時などが、急ぎの心理に陥りやすいケースとして挙げられます。

◆急ぎの危険行動

事故や渋滞に巻き込まれた時
踏切や信号待ちで停車した時
ノロノロ走る車に追従した時

急ぎの心理に陥ったドライバーは次のような危険行動をとりやすくなります。
・信号が黄から赤に変わる時でも交差点に進入する
・一時停止線でも、確実な一時停止をしない
・合図点滅と同時の進路変更をする
・車間距離を詰める
・遅い車へのパッシングやクラクションを鳴らす等の行動です。

◆ヒューマンエラーを防ぐポイント

ヒューマンエラーを防ぐポイントとして
☆心の余裕を持つこと。慌てると判断を飛ばして操作してしまうので、心の余裕を持つこと。
☆思い込みをせず常に危険予測をする「いつも〇〇だから、〇〇だろう」ではなく、「〇〇かもしれない」と運動状況を客観的にみて危険を予測した運転の習慣を身につけること。
☆運転能力向上を目指す運転知識・特性・技能の向上させこと。特に初任ドライバーは、トラックの運動特性をしっかりと理解すること。
☆謙虚な運転態度を心かける運転に慣れてくると「手抜き運転」しがち。トラックは強者意識が働くやすく、相手が避けるだろうといった運転態度に陥りやすくなる。があります。

2.要因分析の活用

①4MM分類法」

交通事故が発生した時は、その要因を分析することが大切ですが、有効な方法の一つ4M分類法があります。
4Mとは、Man:人間、Machine:機械、Media:環境、Management:管理をいいます。
頭文字を取っ4M分類法と言われています。

問題の大きい事実に〇(1点)、◎(2点)を付け、より点数の高いものについて対策を講じます。

対策は優先順位の高い順に実践していきます。

具体的な対策は、夜間走行の場合「夜間は暗いので、危険を見落とさないよう十分注意する」といった形式的な内容では対策になりません。「対向車がいない時はヘッドライトを上向き(走行用前照灯)に切り替える、スピードを昼間よりも落とす」のように具体的な運転行動を対策を行いましょう。自分が実践したかを、検証がしやすくなります。

②なぜなぜ分析

事故、ヒヤリ・ハット情報の進め方

なぜなぜ分析とは、発生した事故について「なぜ?」を繰り返すことで原因の本質を分析することです。

なぜなぜ分析は、特定の原因を深く掘り下げて分析できるという特徴があります。また、考えた過程を図に残すことで、自分の考え方の特徴を検証できます。

主な目的としては、①原因究明②事故情報の共有のためがあります。
ドライバーは、①事故やヒヤリ・ハットが起こった根本的な原因を究明が目的となります。

情報を収集する

まず、考える足がかりとなる情報4M分析に基づき整理」が必要です

・ドライバーの心理状態
・健康状態
・車両などのハード面の状態
・道路・天候等走行環境面の状態
・運行管理の状態

※一番左端に事故内容を書き、なぜを繰り返し右側に書いていきます。右端に最終的原因が出ると原因が起こらない対策を立てます。

「事故、ヒヤリ・ハット情報の進め方」から「なぜなぜ分析の進め方」

【事案の概要】
ドライバーCは、左折するため青信号で交差点に進入したところ、電柱の陰から飛び出してきた歩行者と衝突した。
【事故当時の状況】
・事故発生:21時
・天候:雨
・ドライバーCは、配達先への到着時間に遅れそうだった。
・ドライバーCは新人で、この地域の地理に慣れておらず、地図を確認しながら運転していた。
・歩行者は、雨の為、傘をさしていた。

なぜなぜなぜ分析の留意点

1.ドライバー側の原因と相手の原因に2つに分ける。
2.「安全不確認だった」というのではなく、「赤信号を見落とした」と具体的に書く。
3.ひとつのなぜには2つ以上のなぜを入れないこと。「急いでいたので赤信号を見落とした」であれば、「急いでいた」と「赤信号を見落とした」を分ける。
4.問題発生から順序をさかのぼり、原因の見落としを防ぐ。
5.相手に原因がある場合でも、相手を非難するのではなく自責視点で書く。

交差点事故の分析

なぜなぜ分析を行うと、右端に最終的な原因が出てきます。この原因が起こらないように対策を立てていきます。
「到着が遅れた場合の手順が決まっていなかった」は、管理上の問題なので、運行管理者に相談するべきです。
「歩行者が電柱の陰から出てきた」は、ドライバーが危険予測することで防ぐことができます。

なぜなぜ分析は、ドライバーとしての質を高め、物事を正しく見る力、表現力、論理的な思考なども高まります。

③特性要因を使った分析

特性要因図とは、事故に影響した要因をテーマごとに洗い出し、系統的に整理する分析手法です。
主な要因としては、「ドライバーの要因」「相手側の要因」「車両面の要因」「道路・交通環境面の要因」「管理面の要因」などがあります。

「10.交通事故に関わる運転者の生理的及び心理的要因と並びにこれらへの対処方法」は、終了です。

それでは、次の項目「11.健康管理の重要性」を学びましょう!

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長さ: 10 分

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