②過労運転の防止の為の留意点
この項目では、 2)過労運転の防止の為の留意点について学びましょう。
①労働時間についての規定
◆運転者の特別な規則
自動車の運転従事者に対しては、長時間労働による疲労や体調不良を原因とする交通事故や労働災害を防止することが必要です。
厚生労働省では、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」を定め、業種の実態に応じて、一般労働者とは異なる拘束時間や運転時間、休息時間などの特別な規制を設けています。
◆改善基準告示の目的
交通事故、労働災害をなくすための労働環境の改善が目的です。
◆改善基準告示の対象者
改善基告示の対象者は、四輪以上の自動車の運転者で給料をもらっている人です。輸送安全規則の解釈、運用では、個人事業者・同居家族・法人の業務を執行する役員も含めるとしていますので、社長が自分自身で運送をしている場合も当然に対象となります。
尚、白ナンバーの自家用トラックを運転して配達している人も当てはまります。一方、クレーン車のオペレーターは移動のため運転するので対象にはなりません。
◆労働時間と拘束時間
労働時間は、所定労働時間、所定外労働時間をあわせたものです。
拘束時間とは、会社の外で運転したり、休憩したり、貨物の出荷を待ったりする時間などです。どちらにしても自分の自由な時間ではなく、会社の指示に従っている時間です。残業や手待ち時間も含めた労働時間に休憩時間を足し合わせた全体の時間のことを言います。
また、終業から次の日の始業までの時間は、業務から完全に開放された自由な時間であり、休息期間と言います。
◆休憩時間と手待ち時間
休憩時間とは、労働者が、その時間の自由利用を保証されている時間です。従業員が食事をしても、仮眠をしても自由な時間です。労働時間ではないですが、拘束時間の範囲になります。
手持ち時間とは、荷物の積込みのために待機している時間のことです。荷物がいつ出されるかわからず、出されたらすぐに積込みを始めなければならなかったり、いつでも運転できる態勢をとっている時間です。待機ですから食事や仮眠も本人の自由にできません。
◆拘束時間についての制限
拘束時間は、労働時間+休憩時間となりますが、原則として1日について13時間以内とされています。
業務の都合で13時間以内に収まらない場合には、最大で16時間まで延ばすことができますが、15時間を超えられるのは1週間に2回までとされています。
◆1ヶ月は293時間以内が原則
拘束時間のトータルは、1ヵ月について293時間までが原則です。会社と労働組合との協定があれば、年間6ヵ月までは最大320時間に延長することができますが、延長する場合には、それ以外の月は短くしなければなりません。
1年間で293時間×12ヵ月=3,516時間以内となっていることが必要です。
1ヵ月というのは、1日から末日までということではありません。給料の締め日に合わせることができます。当月15日から翌月14日までと決めることも可能です。
◆始業時間から24時間が1日(ダブルカウントの時間に注意)
自動車運転者の1日とは、始業から連続する24時間とされています。
朝の8時から仕事を始めた場合、明日の朝8時までの24時間となります。しかし、明朝6時から仕事を始めたとすると、6時から8時の2時間は前日の拘束時間の続きとなります。
つまり、13+2=15時間が前日の拘束時間となるのです。しかも、この2時間は、次の日の拘束時間から除くことはできません。
次の日は6時から始まる24時間の間の拘束時間という計算になり、この2時間をもう一度カウントします。
◆1ヵ月の拘束時間
1ヵ月当たりの拘束時間を計算する時は、このダブルカウントした部分を除く必要があります。
1日当たりの拘束時間を単純に足していくと、1ヵ月当たりの拘束時間が実際よりも長く出てくるケースがあるためです。
◆休息期間
休息期間は、ドライバーが自由に使える会社の命令が届かない業務から完全に開放された時間です。
本人の意思で使える期間であり、仮に会社の中であっても睡眠をとってもよいし、食事をしてもよい、風呂もテレビも自由な時間です。
休日は、1週間ごとの疲れをとったり、レジャーにつかったりする時間です。毎日の休息期間とは意味が違います。
なお、仮眠時間は、確かに仕事はしていませんが、仕事の途中であり、会社の命令が届く状態とされています。
◆休息期間は原則11時間(毎日8時間では不十分)
改善基準告示では、8時間以上の休息期間を与えることとされていますが、拘束時間が原則13時間で、休息期間が8時間とすると、足しても24時間になりません。拘束時間が原則13時間ということは、休息期間は原則11時間ということになります。
◆休息期間は分割できる
長距離運送の場合、交通渋滞や荷主都合などにより計画通り休息できないこともあり、4時間以上のまとまった時間が仕事から完全に自由になることができるのであれば、休息期間として認めることとされています。これを分割休息と言います。
この分割休息は、1回4時間以上で、しかも合計が10時間以上でなければ認められません。4時間の休息と6時間の休息で合計10時間や、5時間と5時間で10時間の休息があります。
分割休息の回数は、なるべく少なくなるように努めなければなりません。その為、一定期間の勤務回数の2分の1が分割休息の限度とされています。
一定期間は最高で2ヵ月ですので、2ヵ月の勤務の内1ヵ月までが分割可能となります。
◆休日と休息の違い
休日は、毎日の休息期間とは違い、全く労働時間ではない日です。
ドライバーについては、「休息期間+連続した24時間」で1つの休日となります。8+24時間=32時間が休日の最低時間となります。
分割休息の場合でも最低でも30時間にすることが定められています。
◆日曜日・祭日=休日ではない
休日は、毎週1回与えられますが、必ずしも日曜日に限っているわけではありません。1週間に最低1日休みがあれば、それが何曜日でも構いません。
又、週40時間というのは、8時間労働なら週に2日の休みとなりますが、7時間労働ならば5日間は7時間で6日目は5時間というやり方でも40時間になりますから、週の休みは1日で良いのです。
②運転中の留意点
◆運転時間とは、2日平均で1日当たり9時間
改善基準では1日当たりの運転時間は、特定日を起算として、その前日と翌日の2日間の平均をそれぞれ見て、どちらかが9時間を超えないこととされています。
◆運転時間 3日目の運転時間には注意
運転時間は2日間を平均して1日当たり9時間とされていますが、どの2日を見ても平均9時間という意味ではありません。どちらか一方が平均9時間となっていればよいのです。
1日目に11時間、2日目も11時間運転したとしても、3日目に7時間以下の運転時間であればよいのです。
◆運転時間とは、2週間で区切り、1週当たり44時間
改善基準では、1週間の運転時間についても、特定日を起算日として2週間ごとに区切り、1週あたりの平均が44時間を超えないものとされています。
1週間の平均44時間の限度については、その2週間ごとに計算しなければなりません。
◆連続運転時間は4時間まで
改善基準告示は連続する運転時間についても限度を定めており、その限度を4時間までとしています。運転時間が4時間を超える前に、休憩や荷役など運転しない時間を30分以上取ることが必要です。
30分まとめて取れない場合は、運転しない時間を分けて、1回が10分以上であることが必要になります。
◆ツーマン運行の拘束時間は、1日20時間(拘束時間の特例)
ツーマンで運行する場合は、1日の拘束時間を20時間まで延ばすことができます。1週間に何回も延ばしてもよいことになっています。
しかし、20時間拘束されていることに変わりありませんので、1ヵ月の拘束時間は原則通り293時間(320時間)となっています。
◆ツーマン運行とワンマン運行の組み合わせ
ツーマン運行のドライバーが、ツーマン運行から帰ってきてすぐにワンマン運行する場合は、ワンマンの拘束時間の制限で、改善基準とおり仕事をすることになります。
ドライバーの無理にならないよう操配して、1ヵ月の拘束時間は293時間(320時間)を守らなければなりません。
◆フェリーの乗船時間は、全て休息期間(8時間を超えれば下船時から次の勤務)
従来の改善基準告示では、乗船時間の内2時間を拘束時間で、残りを休息期間としていましたが、トラックドライバーに限り(バス・タクシードライバー除く)2015年9月1日からは全て休息期間として扱われ、その休息期間が8時時間以上ある場合は1日の休息期間を取った事になりました。
尚、積荷のチェックなど、実作業時間は、従来通りに労働時間となります。
※Bの際フェリー乗船して休息期間が8時間以上ならば、1日の休息期間を取ったことになる
※B+D=8時間以上でもOK
※Cは、Dの2倍以下(Dは、Cの半分以上必要)でOK
フェリー下船から勤務終了時までの時間の1/2以上必要
※Bが8時間未満の場合、B+D=8時間以上ならOK
※B、Dのどちらかは4時間を切ってもOK
◆改善基準告示に該当しない運行
緊急支援物資の輸送については、改善基準告示の適用が除外される
大規模災害等が発生した場合、被災地及びその周辺は交通規制や車両の通行が禁止されます。
これに対して緊急輸送に従事する車両については、最寄警察署などで所定の手続きをして緊急輸送車両等確認標章を受ければ、こうした規制区間でも通行することができます。
◆運行期間の制限
「一の運行」は144時間まで
運転者が、所属営業所に出勤してから所属営業所を退社するまでの運行を「一の運行」といい、運行に要する時間は、144時間(6日間)を超えてはいけません。
フェリーに乗船する場合の運行期間
運行途中でフェリーに乗船する場合、運行期間は、フェリーの乗船時間を除いて、144時間を超えてはいけません。
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2)過労運転の防止の為の留意点は、終了です。
それでは、次の項目、3)飲酒や薬物の影響による危険運転防止の為の留意点を学びましょう!