②トラック輸送の社会的役割

1)トラック輸送の現状と社会的役割

今回は、【チャプター2】トラック輸送の社会的役割について学びましょう。

①経済活動を支える輸送

トラックは貨物輸送の主役

国内貨物の総輸送量は、トン数ベースで年間約47億トンになります。その内、9割以上の43億トンはトラックが運んでいます。いかにトラックでモノが運ばれているかがわかります。

輸送機関別の分担率の移り変わりを、トンキロベースで見てみると、昭和25年度は、鉄道が50%、海運が41%であり、トラックは8.7%しかありませんでした。それが昭和55年度になると、鉄道が8.5%と激減し、海運が50.6%、トラックが40.8%に増加しました。平成28年度では、トラックが50%を超えています。道さえあれば、いつでもどこでも、荷物を運ぶことができるトラックは、その便利さから、物流の主役となりました。かつて物流の中心だった鉄道からだんだんトラックへと移っていきます。

どうしてトラックが貨物を運ぶ主役になったのでしょう?その理由として、高速道路がどんどん建設され運ぶ時間が短くなったことがあげられます。
高速道路と輸送トンキロの推移を見てみると、高速道路の完成とともにトラックの輸送トンキロも増加していることがわかります。
次に、トラックなら玄関から玄関まで届けられることや、簡単な荷造りですむこと。トラック積載量がだんだん大きくなり、たくさんの荷物が運べるようになったことなどの理由で、トラックは貨物輸送の主役になってきたのです。

もしも、トラックによる輸送が止まってしまったら・・・

もしも、トラックによる輸送が止まってしまったら、どうなるか考えてみましょう。

街のスーパーマーケットでは、店頭から食材や飲料、衣料品などのあらゆる商品が姿を消すことでしょう。日頃から当たり前に購入している生活必需品の入手が困難となり、人々の衣食住が脅かされる事態となります。

また、医療の現場では医薬品や医療機器、入院患者の食事やシーツが届かなくなります。
その結果、施設内の衛生環境は悪化し、備蓄が底をつけば人命の危機に直結する事態になりかねません。

また、工事現場では建築資材が不足し、工事そのものができなくなってしまいます。
ガス管や水道管などの修復工事、電線や電話回線などの設備工事の現場であった場合、ライフラインへの影響も避けられません。

トラック輸送は国民の安全や生活を支える重要なインフラ

このようにトラック輸送は国民の安全や生活を支える重要なインフラであり、ライフラインと言えるでしょう。そんなトラック輸送の担い手であるトラックドライバーはなくてはならない存在なのです。

②エッセンシャルワーカーとしての役割

エッセンシャルとは必要不可欠という意味

トラック輸送の社会的役割の2つ目は、トラックドライバーは、国民生活と経済を支えるエッセンシャルワーカーであるということです。エッセンシャルとは、必要不可欠という意味です。医療従事者など、人々の生活基盤を守るために必要な仕事に従事する人々のことをいいます。

ネット通販の利用増で宅配便が増加

コロナ禍による外出自粛の影響で、インターネット通販の利用が増加しています。国土交通省の資料によると、宅配便の取り扱い個数は、毎年増加しており、令和元年では43億個を超えています。

私たちは、エッシェンシャルワーカーとして、トラックによる輸送を止めることなく、ドライバーは世の中を走り続けています!

③災害時のライフラインとしての役割

戦後の2大自然災害

阪神淡路大震災

1995年(平成7年)、兵庫県淡路島北部でM7.3の地震が発生しました。阪神高速の崩落など交通網が寸断し、近畿圏が深刻な被害を受けました。地震後に大規模火災が発生し、近代都市の災害として世界中に衝撃を与えました。

東日本大震災

2011年(平成23年)、東日本でM9.0、震度7の巨大地震が発生しました(国内観測史上最大)。
地震による大津波、福島第一原発事故も発生し、戦後最悪の自然災害となりました。
地震後40万人以上が避難し、生活物資輸送をトラックが担いました。

毎年、自然災害が発生

引用:国土交通省

毎年、全国各地で自然災害が頻発、甚大な被害が発生しています。「水や当面の食糧などは3日分あると良い」といわれていますが、災害の規模が拡大し、3日では復旧できなくなっているのが近年の天災の特徴です。

災害時のライフライン=命綱

被災者への物資、生活必需品を輸送するためにトラック輸送は必要不可欠です。大規模な災害では物資の輸送だけではなく、緊急物資の集積所において、物資の仕分けや入出庫管理などの物流管理業務も行っています。
トラック運送業界は、災害時の緊急物資輸送において重要な「ライフライン=命綱」としての役割を果たしているのです。

環境への配慮

トラックと環境問題

ディーゼルトラックは、大気汚染の原因となるNoxやPMなどを排出しています。
窒素酸化物(NOx)とは、物が高い温度で燃えたときに窒素(N)と酸素(O2)が結びついて発生する一酸化窒素(NO)と二酸化窒素(NO2)のことで人体に有害な物質です。

PMとは、Particulate Matter(粒子状物質)の頭文字です。工場や自動車、船舶、航空機などから排出され、大気汚染の原因となる物質のことです。

近年、最新規制適合車両へ代替が進み、大気汚染問題は改善する方向へ進んでいます。全日本トラック協会では「新・環境基本計画」を策定し、エコドライブ(省エネ運転)の普及促進をはじめとする対策メニューを示し、業界活動を推進しています。

地球温暖化防止対策

国土交通省の資料によるとトラック運送業界の燃料使用量は、年間約1550万㎘となっています。
業界をあげた燃料使用量の削減が重要な課題となっています。

燃料の削減に最も効果が大きいエコドライブ(省エネ運転)のポイント

・無駄なアイドリングを止める
・エンジンの空ふかしや急発進などの乱暴な運転は厳禁
・エコドライブは、穏やかな運転を心がけること
・安全性の向上やコスト削減などにつながる
・全てのドライバーの常識として心得る

地域環境への配慮

無駄なアイドリングや空ふかしは、燃料を無駄に消費するばかりでなく、騒音や振動などで、地域や沿道の住民に大きな迷惑を及ぼします。
道路や駐車施設などでの車外へのゴミのポイ捨ては、道路管理者や周辺住民に対する迷惑行為であり、犯罪行為でもあります。

環境にやさしいトラック

天然ガス自動車は、ガソリンや軽油を燃料としている自動車に比べて、CO2(二酸化炭素)の排出量を10%~20%程度削減することができます。

・酸性雨や光化学スモッグの原因となるNOx(窒素酸化物)、CO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、喘息を引き起こす黒煙がほとんど排出されず、SOx(硫黄酸化物)にいたっては全く排出されません。
騒音が少ないのも特徴です。
・気体燃料である天然ガスを使用しているため、低温下でのエンジンの始動がスムーズに行えます。

この章のまとめ

 ①経済活動を支える輸送
  国内貨物の9割以上を輸送しているトラックは貨物輸送の主役

 ②エッセンシャルワーカーとしての役割
  トラックドライバーは、人々の生活基盤を守るために必要な仕事

 ③災害時のライフラインとしての役割
  災害時の重要な「ライフライン=命綱」としての役割

 ④環境への配慮
  地球温暖化対策を実施し、地球環境を守る役割と責任

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以上のように、トラックドライバーの仕事は、社会的に重要な役割を担っていることを意識し、自信と誇りをもってくださいね。
小テストに合格したら次に進んでください!

長さ: 10 分

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