①過積載による事故要因と社会的影響

<目 次>

5.過積載の危険性
1)過積載による事故要因と社会的影響
2)過積載による罰則
3)過積載の防止

初任ドライバー安全教育12項目の「5.過積載の危険性」について学びます。
項目は、1)過積載による事故要因と社会的影響、
    2)過積載による罰則、
    3)過積載の防止に分かれています。
この項目では、1)過積載による事故要因と社会的影響 を学びます。

1) 過積載による事故要因と社会的影響

①過積載による事故の要因

◆事故を起こしやすい非常に危険な状態

過積載とは、道路運送車両法に定められたトラックの最大積載量を超えて貨物を積載して運行する違反行為をいいます。
過積載の状態でトラックを運転した場合、定量積載の状態と比較すると、車両自体が不安定になり、事故を起こしやすい非常に危険な状態となります。

◆制動距離が長くなる

過積載の状態で運転をした時、制動距離は通常の定量積載時に比べてブレーキが正常に効きにくく、制動距離が長くなり追突事故を引き起こす大きな要因になります。

◆過積載は、衝撃力が大きくなる

■衝撃力は重量に比例し、速度の2乗に比例する60km/hの速度で壁に激突した時の衝撃力は、14mmの高さから落下したときと同じ衝撃力

2倍の120km/hの場合に56mmの高さ
衝撃力は車両全体の重量に比例して大きくなる

同じ高さから床に物を落とした時、重たい物の方が軽い物よりも床の損傷が大きくなり、また、同じ物でも高い所から落とすと低い所より損傷が大きくなります。つまり床にかかる力は重さと速さに大きく関係しています。
この力を衝撃力と呼び、衝撃力は重量に比例し、速度の2乗に比例して大きくなります。60km/hの速度で壁に激突した時の衝撃は、14mの高さから落下したときと同じ衝撃力となり、2倍の120km/hの場合には56mにもなります。この衝撃力は車両全体の重量に比例して大きくなり、過積載での運転は、定量積載時の時よりも重量が増しているので、衝突するとその分だけ大きく強い衝撃力が加わることになります。そのため、過積載で運転し衝突事故を起こした場合は、死亡事故や重大事故となる可能性が非常に高くなります。

◆車両のバランスを失いやすい

遠心力とは、急カーブを曲がるとき、車両全体がカーブの外へ持って行かれる力

遠心力は、①速度に比例して大きくなる②カーブの半径に反比例して大きくなる③車の重量に比例して大きくなる。したがって、過積載をした場合は重量が重くなる分だけ遠心力が大きく作用することになります。図のように重心が低いAと重心が高いBを比べると、平坦な場所での安定は同じでも、斜面ではBの方が重心位置のズレが大きく不安定のなります。

◆ブレーキに大きな負担

慣性とは、止まっている物は、そのまま止まっていようとする。動いている物は、そのままの速度で動き続けようとする法則のことです。
慣性力とは、この慣性に対して加速させたり、停止させたりする力です。過積載で下り坂を走行すると通常よりもスピードが増し、通常通りにブレーキを使用しても、ブレーキの負担が大きくなります。

すべての物体は、「止まっている物は、そのまま止まっていようとする」「動いている物は、そのままの速度で動き続けようとする」という法則があり、これを慣性といいます。電車やバスに乗っている時に、発進時に体が後方にずれたり、停車時には体が前方にズレたりするのは、この慣性によるものです。この慣性に対して加速させたり、停止させたりする力を慣性力といいます。
この慣性力は、「重量に比例して大きくなる」「速度の2乗に比例して大きくなる」といった性質があります。したがって、重量に比例して慣性力が大きくなることから、過積載で下り坂を走行すると通常よりもスピードが増し、通常通りにブレーキを使用しても、ブレーキの負担が大きくなります。フットブレーキを連続的に使用し続けると、ブレーキライニングが加熱しブレーキを踏んでも効かなくなるフェード現象が起きる危険性があります。

◆トレーラではジャックナイフ現象が起こりやすい

ジャックナイフ現象とは、セミトレーラを運転しているドライバーが急ブレーキや急ハンドルをした時にトラクタとトレーラが「く」の字に折れ曲がる現象

過積載時は、トレーラがトラクタを押す力が大きくなる

ジャックナイフ現象とは、セミトレーラを運転しているドライバーが急ブレーキや急ハンドルをした時にトラクタとトレーラが「く」の字に折れ曲がる現象です。
急ハンドルを切った時、トラクタは曲がってもトレーラは慣性でそのまま直進しようとする力が作用してこの現象が起きます。過積載時には、定量積載時よりトレーラがトラクタを押す力が大きくなることから、ジャックナイフ現象が非常に起きやすくなります。

社会に対する影響

◆過積載車両は道路に大きな損傷を与える

道路や橋梁の強度は、道路法車両制限令において、車両総重量20トン(重さ指定道路においては25トンまで可)、軸重10トン、輪荷重5トンと規定している

■過積載車両が通行すると、路面にわだちが生じたり、橋梁が損傷するなど道路施設に大きな損害を与える。

道路や橋梁の強度は、法令で定める車両総重量の自動車の通行を前提として設計されています。
具体的には、道路法車両制限令において、車両総重量20トン(重さ指定道路においては25トンまで可)、軸重10トン、輪荷重5トンを最高限度として規定しており、これを超える車両の通行には指定道路を除き、事前許可が必要となります。
過積載車両が通行すると、路面にわだちが生じたり、橋梁が損傷したりして、道路施設に大きな損害を与え、通行する他の車両の安全運転を妨げることになります。
道路橋の劣化に与える影響については、軸重20トンの車両1台が走行すると、10トン車の約4,000台相当となり、積載重量を超過した違法な大型車両がわずか0.3%であっても、道路橋の劣化の9割以上を引き起こします。そのため、重量制限を超過する車両に対する取り締まりを強化し、悪質違反者には厳罰化するとして、特に基準値の2倍以上の重量超過の違反者に対しては告発が行われています。

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以上で 1)過積載による事故要因と社会的影響は、終わりです。

次の項目を学びましょう。

長さ: 10 分

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