①貨物自動車運送事業に係わる法令
<目 次>
1)トラック運行に係る法令
Ⅰ貨物自動車運送事業に係る法令
①法律
②省令・政令
③通達と告示
④トラックドライバーが知っておくべき法律
⑤貨物自動車運送事業法
Ⅱ自動車の運転に係る法令
①道路交通法
②労働基準法
③労働安全衛生法
④働き方改革関連法
Ⅲ車両管理の係る法令
①道路運送車両法
②道路法
③ドライバーの日常業務
2)義務を果たさない場合の影響の把握
Ⅰ運転者に対する刑事処分
Ⅱ運転者に対する行政処分
Ⅲ会社に対する行政処分
Ⅳ重大事故を引き起こした場合の罰則、及び加害者・被害者心理
初任ドライバー安全教育12項目の、
「2.トラックの安全運行を確保するために遵守すべき基本的事項」について学びます。
この項目は、1)トラック運行に係る法令、2)義務を果たさない場合の影響の把握に分かれています。
1)トラック運行に係る法令 では、
Ⅰ貨物自動車運送事業に係る法令
Ⅱ自動車の運転に係る法令 Ⅲ車両管理に係る法令の項目に分かれています。
この項目では、Ⅰ貨物自動車運送事業に係る法令について学びましょう。
Ⅰ貨物自動車運送事業に係る法令
①法律
「法律」は、国民全体の生活や事業活動をするための法規範(人に一定の行為を命令または禁止する)で、国民の代表者で構成される国会の議決によって成立します。ところが、法律で決めた内容(決議)を実際に運用するための細かいルールまで全て法律で定めることはとても困難です。また、法律は改正手続きに時間がかかるので、社会情勢の変化に敏感に対応できない弱点があります。
②省令・政令
■そこで・・・「法律」は、原理・原則だけを定めるにとどめ、法律条文の適用基準や運用上の細則の制定は、法律自体が内閣や所管省庁に委任しています。
①法律は、原理・原則だけを定める
②法律条文の適用基準や運用上の細則は、法律自体が内閣や所管省庁に委任
■それで・・・委任を受けた内閣が委任事項を制定する法律を「政令」といい、所轄大臣が制定する命令を「省令」といいます。
大まかにいえば「〇〇令」という名称は政令で、それ以外の「〇〇規則」などは省令にあたります。
③通達と告示
●通達
通達は、行政機関内部で発進される命令や指示です。通達は国民や事業者に向けたものではありませんが、法令を解釈する上で重要です。
行政機関内部において、上級機関から下級機関へ送る命令のこと
上級機関と下級機関とは、例えば国土交通省と地方整備局のように指揮監督関係にあるような関係のことです。
●告示
告示は、行政機関が国民や事業者に対して重要な事項を知らせる行為です。トラック運送事業についても関係法令とともに、このような政省令や告示が数多くあり、これらを確実に遵守していくことが求められます。
「行政機関が国民や事業者に重要な事項を知らせること」は、国民は行政機関ではないため、通達という言葉を使うのは違和感があります。
報告という言葉も、国民は国の上司ではないため違和感があります。その際は「告示」といいます。
④トラックドライバーが知っておくべき法律
トラック運送事業は、道路という公共施設を利用して成り立っています。一方でトラックは、一度交通事故を起こすと一般の人々に大きな影響を及ぼす一面も持っています。したがって、主に「安全確保」の観点から、法律などによって様々な社会的制約を受けています。
◆法律の特色
貨物自動車運送事業法と道路運送車両法は、主にトラックの安全運行を確保する目的からトラック運送事業を経営する事業者が負うべき義務によって構成されています。
道路交通法は、トラックドライバーの安全運転義務を中心に、道路法は、道路網の整備や保全などにより構成されています。
一方、労働基準法と労働安全衛生法は、労働者の権利や安全と健康を確保するために、事業者の義務を定める観点から、一体的の関係にある法律です。
⑤貨物自動車運送事業法
貨物自動車運送事業法は、トラック運送事業の種類をはじめ、許可とその基準、安全管理体制などトラック運送事業に係る根本的な事項について規定された法律です。また、運行管理やトラック協会が実施している適性化事業に関する事項も、この法律で定められています。お客様のニーズに応じて、有償でトラックによる運送サービスを提供するには、先ず第一にこの法律に基づく許可が必要になります。
一般的なトラック運送事業については、一般貨物自動車運送事業の許可が必要となり、貸切り運送や積合せ運送を行うことができます。
不特定多数のお客様から集荷した貨物を定期便によって積合せ運送を行う事業につては、特別積積合せ貨物運送事業の許可が必要です。
お客様が一社に限られる形態のトラック運送事業については、特定貨物自動車運送事業の許可が必要となります。
軽自動車・二輪自動車を使って貨物運送を行う場合は、営業所を管轄する運輸支局長へ届出が必要となります。
軽貨物運送事業だけが届出制で、他の2つは許可制となり、軽貨物運送事業のみ開業に際し役所の許可が不要になるなど、手続きが簡略化されています。
1.一般貨物自動車運送事業
(トラックターミナルの拠点を使って、積合せ運行は、特別積合せ貨物運送の事業許可が必要)
2.特定貨物自動車運送事業(単一特定)
3.貨物軽自動車運送事業
軽自動車、二輪自動車を使って貨物運送を行う事業
◆貨物自動車運送事業輸送安全規則
輸送安全規則の目的は、貨物自動車運送事業に基づき、輸送の安全の確保に関する事項を定めています。
事業者は、ドライバーに国土交通大臣が定めた内容に基づいて適切な指導及び監督をしなければなりません。
●過労運転の防止
●過積載防止と貨物の積載方法
●通行の禁止、制限等違反の防止
●車庫の確保
●点呼
●乗務記録
●運行記録計
●事故の記録
●従業員への指導・監督
●異常気象時等の措置
●点検整備
●乗務員として遵守すること
●運転者として遵守すること
●運行管理者
●運行管理者の業務
等が定められています。
過労運転防止に関しては、業務を行うため必要な員数の事業用自動車の運転者を常時選任しておかなければならいことや、休憩・仮眠施設の整備・管理・保守、休息期間の確保、酒気帯び運転の禁止、健康状態の把握など安全規則が定められています。
■輸送の安全にかかわる情報の公表
事業者は、毎事業年度の経過後100日以内に、輸送の安全に関する基本的な方針、その他の輸送の安全に係る情報で国土交通大臣が告示で定める事項について、インターネットなど適切な方法により公表しなければなりません。
◆輸送安全規則第10条1項により、国土交通省告示1366に定められた12項目
トラックドライバーは、法令に基づいて守らなければならない項目の知識、安全運行を確保するために必要な運転技術や知識などを習得しなければなりません。
◆運転者に対する指導及び監督の指針
①事業用自動車を運転する場合の心構え
②事業用自動車の運行の安全を確保するために遵守すべき基本的事項
③事業用自動車の構造上の特性
④貨物の正しい積載方法
⑤過積載の危険
⑥危険物を運搬する場合に留意すべき事項
⑦適切な運行の経路及び当該経路における道路及び交通の状況
⑧危険の予測及び回避並びに緊急時における対応方法
⑨運転者の運転適性に応じた安全運転
⑩交通事故に関わる運転者の生理的及び心理的要因及びこれらへの対処方法
⑪健康管理の重要性
⑫安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法
以上法定12項目が定められています。
事業者には、輸送の安全を確保するため、法令に基いて運転者に必要な内容を指導・監督することが求められています。
運転者は、守らなければならない項目の知識、安全を確保するために必要な運転技能や知識を習得しなければなりません。
■事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針
丁寧に教えなければいけない!!
1.通年で全運転者に行う一般的な指導及び監督の指針の項目として12項目の内容を実施する
2.初任運転者に対し、一般的な指導及び監督内容全てを15時間以上かけ丁寧に実施すること。及び安全な運転方法を実際に事業用車を運転させ20時間以上かけ実施することが定められています。
3.事故惹起運転者、高齢運転者
高齢運転者、事故惹起運転者といった特定の運転者に対しては、よりきめ細やかな指導を行う必要があります。
トラック事業者が特定の運転者に対して行わなければならない特別な指導は個々の運転者の状況に応じ、適切な時期に十分な時間を確保しトラックの運行の安全を確保するために必要な事項を確認させることを目的に実施しています。
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Ⅰ法貨物自動車運送事業に係る法令は以上です。
次の項目Ⅱ自動車の運転に係る法律を学びましょう!