③トラックによる交通事故の実態
1.事業用自動車を運転する場合の心構え
初任ドライバー安全教育12項目の1つ目、事業用自動車を運転する場合の心構えについて学んでいきましょう。この項目で学ぶ内容は3つです。
1)トラック輸送の現状と社会的役割について
2)トラックによる交通事故の実態と社会に与える影響について
3) トラックドライバーの心構えについて
2)トラックによる交通事故の実態と社会に与える影響
【チャプター1】トラックによる交通事故の実態
<目 次>
①社会的に影響の大きいトラック事故
② 事業用トラック 死亡事故件数
③事業用トラックによる交通事故件数
④事業用トラックによる死亡事故件数
⑤車両数1万台あたりの死者数
⑥追突事故の発生状況
⑦交差点事故の特徴
⑧時間帯別の死亡事故発生状況
⑨法令違反別の死亡事故発生状況
①社会的に影響の大きいトラック事故
■ 交通事故の社会的影響
貨物を安全・安心・確実に輸送しライフラインを守っていくためには、常に安全を最優先させなければなりません。トラックによる大きな事故は、時として業界や社会全体にも損失を与え、1人のドライバーの事故によってトラック運送業界全体の姿勢が問われ、他の多くの事業者やトラックドライバーも影響を受けます。
②事業用トラックによる死亡事故件数
■ 死亡事故件数
2011年は347件でしたが、2020年では207件となっています。この10年間で140件減少しています。グラフを見ると、全体の死亡事故件数は現状傾向にあることがわかります。
■ 死亡事故件数【道路区分別】
道路区分別の死亡事故の件数は、2020年は、一般道路では173件発生し、死亡事故全体の83.6%になります。
高速道路では34件発生し、死亡事故全体の16.4%となっており、死亡事故の8~9割は、「一般道路」になっています。
■ 死亡事故件数【一般道路上での車両区分別】
死亡事故が多い、一般道路上での車両区分を見てみると、大型による死亡事故は、
2011年が284件中154件で、54.2%
2020年では、273件中99件で、57.2%となります。
5~6割は「大型」による事故です。
■ 死亡事故件数【高速道路上での車両区分別】「大型」による死亡事故
高速道路ではどうでしょうか?
2011年は、63件中45件、71.4%
2020年では、34件中22件で、64.7%となります。6~7割は「大型」による事故になっています。
■ 死亡事故件数【運転者の年齢層別 】
死亡事故の運転者の年齢層別で見てみると2020年では、204件の内、50歳以上の割合が5割以上となっており全体的に「高齢化」の傾向にあるといえます。
③事業用トラックによる交通事故件数
■事業用トラックによる交通事故件数の推移
このグラフは、事業用トラックによる交通事故件数の推移です。事業用トラックによる交通事故件数は、2009年(平成21年)は20,681件ですが、2019年(令和元年)は、11,629件で、マイナス9,052件と減少していることがわかります。
④事業用トラックによる死亡事故件数
■事業用トラックによる死亡事故件数
このグラフは、事業用トラックによる死亡事故件数の推移です。事業用トラックによる死亡事故件数は、2009年(平成21年)は、397件でした。
2019年(令和元年)は、239件でマイナス158件となっており、いずれも減少しています。
⑤車両数1万台あたりの死者数
■業種別事業用自動車1万台あたりの死者数
業種別事業用自動車1万台あたりの死者数をみると、事業用トラックは、ハイヤー・タクシーと同じ2.1人でバスより多くなっています。
⑥追突事故の発生状況
■ 事業用トラックによる追突事故の発生状況
事業用トラックの死傷事故件数の構成比をみると、追突事故が約半数を占めています。
高速道路では7割に及びます。トラックによる追突事故の多くは、漫然運転や脇見運転によるものですが、その要因は居眠りや過労が指摘されています。また追突は、一般道路の自然渋滞の車列定速で追突するケースが多い一方で、高速道路の渋滞では最後尾に高速で追突し大事故となるケースがあります。
⑦交差点事故の特徴
■ 事業用トラックによる交差点事故の特徴
交差点事故の特徴としては、事業用トラックが、第一当事者となる交差点での対歩行者・自転車の死亡事故は、74件で追突事故よりも多いことがわかります。
【左折・右折時における死亡事故の特徴】
交差点での死亡事故で最も多いのが「人との接触事故」、次いで「追突事故」です。
特に人との接触事故の内ほとんどが交差点で発生しており、中でも歩行者・自転車との接触事故の割合が高くなっています。交差点での死亡事故を見ると左折では対自転車が9割を占め、右折では対歩行者が9割を占めています。
【左折死亡事故における大型車の割合】
又、左折時の死亡事故、26件のうち、大型車によるものが24件で、9割強を占めています。
⑧時間帯別の死亡事故発生状況
■ 時間帯別の死亡事故発生状況
時間帯別の死亡事故発生状況を見てみると午前4~5時が最も多く、全体的には午前0~11時の時間帯が多いことがわかります。事故は、深夜から明け方に多く発生しているということです。
■ 事業用トラックの車種別時間帯別死亡事故件数
このグラフは、事業用トラックの車種別時間帯別死亡事故件数です。
大型車は、午前2~3時と午前10~11時
中型車は、午前4~7時
準中型は午前4~5時と午前8~9時が多くなっています。
⑨法令違反別の死亡事故発生状況
■ 法令違反別の死亡事故発生状況
事業用トラックの死亡事故は、安全運転義務違反が、全体の3分の2を占めています。
【4大要因】漫然運転・脇見運転・安全不確認・動静不注視
安全運転義務違反の内訳として、漫然運転、脇見運転、安全不確認、動静不注視があります。これらを、安全運転義務違反の4大要因といいます。
【漫然運転】
まず、漫然運転ですが、安全運転義務違反159件中、57件で、36%を占めています。漫然運転とは、集中力や注意力が低下した状態で車を運転することをいいます。前方を見て運転はしてはいるがボーっとしたり、考え事をしたりして運転に集中できていない状態です。他の車や歩行者・信号などに気付くことができず、交通事故を起こす原因となります。
【脇見運転】
次に、脇見運転ですが、47件で30%を占めます。脇見運転とは、運転中に他のモノに気をとられて、前方から視線を外してしまっている状態のことをいいます。スマホを見ながらの「ながら運転」などが脇見運転に該当します。安全確認ができない状態で車が走行しているため、前方の車両に後ろから衝突してしまうなど、重大な交通事故の原因になりやすいので絶対に行ってはいけません。
【安全不確認】
安全不確認は、40件で、25%を占めます。安全不確認とは、一時停止や徐行をしたものの、十分な安全確認をしなかったため、相手車両を見落としたり、発見が遅れたりして事故になることをいいます。
「見通しの悪い交差点で、一時停止をし、何も来ていなかったので交差点に進入したところ、死角にいたバイクと衝突した」などが該当します。
【動静不注視】
動静不注視は、4件で、3%を占めます。動静不注視とは、事故を起こしそうな相手を認知していながら、その危険性を軽く見て、相手が避けてくれると思うなど、相手の動きに注視しなかったことが原因で事故や違反を起こすことをいいます。
相手が止まってくれるだろう。相手がよけてくれるだろうなど、「だろう運転」の典型的な事故のことです。
YouTube動画版はこちら↓
「プロドライバーとして、安全運転に徹しましょう!」
交通事故による死亡事故は、年々減少しているとはいえ、事業用トラックによる事故は、まだまだ多いといえます。