④トラックによる交通事故事例
2)トラックによる交通事故の実態と社会に与える影響
【チャプター2】トラックによる交通事故事例
<目 次>
①夜間、歩行者との事故
②左折時の自転車巻き込み
③高速道路で追突
④横断歩道手前で追突
⑤交通事故のない社会に向けて
①夜間、歩行者との事故
発生時期:午後11時台に発生
天 候:晴れ
道路状況:脇道のある片側2車線道路、制限速度60km/hの乾燥路面
運転者:運転経歴6年 年齢30歳代
事故類型:直進時の人対車両
事故車両:中型貨物自動車
相手方:歩行者をはねた事故
【事故の発生状況】
運転者は、中央分離帯の設けられた片側2車線道路の第1車線を、ヘッドライトを下向きにして走行中、前方への注意を怠り漫然と進行したため、前方左側の脇道から道路を横断してきた歩行者の発見が遅れてはねてしまったとうものです。
【事故要因】
①深夜の交通量の少ない道路であったことから、油断して漫然と走行していたため、道路を横断中の歩行者(男性・80歳代)の発見が遅れた。
②ヘッドライトを下向きにして走行していたために前方の状況把握が遅れた。
【事故対策】
①深夜の交通量の少ない道路であっても油断せず、前方の状況をよく見て走行する。
②前方の危険を早めに把握し、 的確な対応が取れるようにするために、対向車も前車もいないときは、ヘッドライトを上向きにして走行する。
②左折時の自転車巻き込み
発生時期:午前4時台
天 候:晴れ
道路状況:片側2車線の交差点 乾燥路面 制限速度40km/h
運 転 者 :運転経歴0.5年 年齢20歳代
事故類型:車両対車両(交差点左折時)
事故車両:中型貨物自動車
相 手 方 :自転車
【事故の発生状況】
運転者は、夜明け前の薄暗い道路を走行中、信号機のある交差点にさしかかった。配送先は、交差点を左折した先であったので、目的地を探すことに意識が集中し、交差点の状況に対する注意が欠けたため、同一方向から横断歩道を渡ってきた自転車を見落として、左折していく時に巻き込んでしまった。
【事故要因】
①初めての配送先ということもあって交差点の状況より配送先を探すことに注意が向けられていた。
②同一方向から進行してくる自転車は、ミラーなどの死角に入りやすく、発見が遅れがちになることがよく理解されていなかった。
【事故防止策】
①左折時は、必ず右前方および左前方、後方の状況を確認する自転車はスピードを出して進行してくるケースも多く、特に同一方向から進行してくる自転車は見落としやすいので注意。
②左折時は徐行し、かつ横断歩道の手前で一時停止して安全確認をすること。
③高速道路で追突
発生時期:午後6時台
天 候:晴れ
道路状況:片側2車線の高速道路 乾燥路面 制限速度100km/h
運 転 者 :運転経歴4年 年齢30歳代
事故類型:車両対車両(高速道路渋滞時)
事故車両:中型貨物自動車
相 手 方 :普通自動車
【事故の発生状況】
運転者は、高速道路の第1車線を走行していたが、4時間以上休憩もとらずに運転を続けていたこともあって、注意力が低下し、ぼんやりとした状態であった。そのため前方で発生した事故の影響により、渋滞していることに気づくのが遅れ、渋滞車両の最後尾で停止していた乗用車に追突し、乗用車の運転者を死亡させた。
【 事故要因 】
①長時間の連続運転により、 疲れがたまり、漫然運転の状態となっていたため、前方に対する注意力が低下していた。
②高速道路は、停止している 車両はいないという思い込みがあった。
【事故防止策】
①長時間の連続運転は、疲労から緊張感の欠如や集中力・ 注意力を低下させる漫然運転 などの大きな原因となるので、 必ず休憩を十分にとって疲れをためないようにする。
②高速道路であっても、事故や道路工事などにより道路が渋滞して車両が停止していることはよくあるので、常に前方の状況に注意して走行する。
④横断歩道手前で追突
発生時期:午後3時台
天 候:雨
道路状況:片側1車線の単路 湿潤路面 制限速度40km/h
運 転 者 :運転経歴4年 年齢30歳
事故類型:車両対車両(単路走行時)
事故車両:中型貨物自動車
相 手 方 :普通自動車
【事故の発生状況】
運転者は、降雨時にも関わらず、 前車との車間距離を十分とらずに追従して走行していた。横断歩道のある場所に接近したとき、 前車が停止することを予測していなかったため停止に気づくのが遅れた上に車間距離も取っていなかったために追突し、前車の後部座席に乗車していた人(子ども・4歳)を死亡させてしまった。
【 事故要因 】
①前車が停止することはないという思い込みから、降雨時にもかかわらず、十分な車間距離をとらずに走行していた。
②前方に横断歩道があったが、 横断歩行者のために前車が停止するかもしれないという予測ができていなかった。
【事故防止策】
①前車が、急停止しても追突しないだけの車間距離を常に保持しておく、特に降雨時など路面が滑り やすいときは、いつもより長い車間距離をとっておく。
②横断歩道のある場所では、横断歩行者のために前車が停止するかもしれないと考えて、 前車の動きに注意するとともに、 車間距離を十分にとる。
⑤交通事故のない社会に向けて
今まで見てきたように、毎年同じような死亡事故が発生しています。すべての事故は、基本ルールを守っていたら防げたものばかりです。国⼟交通省は、第11次交通安全基本計画を発表し、令和3年度~7年度を期限とした、道路交通の目標を設定して取り組んでいます。その内容は、世界一安全な道路交通を目指し、令和7年までに24時間死者数を2,000人以下にすること。令和7年までに重傷者数を22,000人以下にすることが盛り込まれています。
国土交通省の安全プランを受けて、全⽇本トラック協会では、「トラック事業における総合安全プラン2025」を策定しました。このプランには、事業⽤トラックを第一当事者とする死者数と重傷者数の合計を⾞両台数1万台当たり「6.5人 以下」とすることを、各都道府県の共有目標としています。
交通事故のない社会に向けて
健康起因事故の防止するために健康管理の徹底
トラックドライバーにとって健康維持は極めて重要
体調の悪い状態でハンドルを握れば、注意力や集中力が低下し、事故になる危険性が高まります。
安全管理機器、特に、デジタコとドラレコの活用も進んでいます。
デジタル式運行記録計(デジタコ)とは、車両の運行にかかる速度・時間等を電子的に記録する装置のことです。
解析ソフトを活用して詳細な記録を分析することで、安全や省エネ運転の指導が容易になります。
ドライブレコーダー(ドラレコ)とは、走行中の映像を記録する装置のことで、デジタコと一体のものや、通信機能によって、 記録した映像を事業所に送信する機種もあります。
YouTube動画版はこちら↓
「自分だけは大丈夫!」はありえません。
交通事故の事例を自分事として捉えて、プロドライバーとして安全運転に徹しましょう。小テストを実施し、次の項目を学んでいきましょう。