⑤緊急時における適切な対応

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この項目では、 5) 緊急時における適切な対応について学びましょう。

Ⅰ交通事故や車両故障が発生した際の対応

◆事故現場での適切な措置はドライバーの義務

どれだけ安全運転に努めていても、事故を起こしてしまうことがあります。事故発生時に、適切かつ迅速な措置を執らなければ、事故による被害や損害を一層拡大することになりかねません。事故発生時に落ち着いて対応できるように、事故現場での措置方法を習得しておくことはドライバーの皆さんの義務です。

①負傷者の救護

事故を起こしてしまった場合、どんなに軽微に思える場合でも、直ちに運転を停止して、人や物に対する被害の確認をしなければなりません。負傷者がいる場合は、直ちに119番通報して救急車を要請します。救急車が到着するまでの間、負傷者の負傷の程度に応じて必要な応急救護処置を行います。

②道路における危険の防止

事故を起こした車に後続車の追突を防止する為に、
①ハザードランプを点滅する
②発煙筒で後続車両に警戒合図を送る
③高速道路の場合は、停止表示機材を後続車から見やすい位置に置きましょう。

③火災防止のための措置

事故現場では軽油やガソリンなどが漏れている危険があります。火気厳禁で、タバコを吸うなどの火を使う行為は絶対にしてはいけません。また危険物に発火・引火が発生したら、消火器などを使い発火防止の措置を行いましょう。小規模の時は、初期消化を行ってください。尚、トラックが自走できるのであれば事故地点・停止位置を確認した後、事故現場近くの路肩や空き地に移動させて下さい。

④安全な場所への退避

負傷者の救護や危険防止の措置が終わったら、車内や車道上に留まるのではなく、ガードレールの外(故障車両後方)など安全な場所に退避します。特に高速道路の場合は、車内や道路に留まるのは非常に危険です。

⑤警察への通報

負傷者の救護と続発事故防止措置が終わったら警察に通報します。
①事故発生の日時と場所
②死傷者の数と負傷者の負傷の程度
③損壊した物とその損壊の程度
④車両に関わる車両の積載物
⑤事故現場でとった措置

⑥事務所への報告

警察への通報を済ませたら、事務所に負傷の程度や車両の状況、これからとろうとする措置と予定を報告し、運行管理者の指示を受け行動する。(事故速報ダイヤルへの入電)
ドライバー本人がケガなどで連絡できない場合は、救助をおこなっている人に連絡先を伝えて連絡をお願いしましょう。

☆緊急時は、先ず会社の誰に連絡するのか確認しておくこと!

⑦事故現場におけるドライバーの独断による示談交渉の禁止

損害賠償などの事故処理は会社の担当部署が行うことであり、ドライバーが事故現場で交渉事を行うと、その後の相手方との事故処理の過程でトラブルが発生するおそれがあります。事故現場では相手との示談には応じず、示談書や念書にサインをしてはいけません。示談を強要されてもきっぱりと断らなければなりません。

⑧目撃者の確認など

ドライブレコーダーを装着しているトラックであれば、事故の状況が映像として記録されており、目撃証拠となります。事故目撃者がいる時は氏名、住所、連絡先を聞いておきましょう。また、事故現場の道路状況や衝突地点、停止位置、被害者の事故直前及び事故後の状態、破片の散乱状況などをスマホなどで撮影したり、事故現場の見取り図をメモしておくと役立ちます。

◆車両故障時の対応

①一般道路

走行中、車両トラブルが発生した時は、ドライバー自身の安全は勿論のこと、走行中の周囲の車の安全を確保するため、慌てずに的確な対応をとる必要があります。
1.ハザードランプを点滅させトラブル発生を後続車に知らせる。
2.次にスピードを落とす。ブレーキがきかない場合は、シフトダウンを繰り返し、エンジンブレーキと排気ブレーキを使ってスピードを落とす。
3.完全に走行不能になる前に、できるだけ路肩など、交通の妨げにならない場所に停車し、駐車ブレーキをかける。

※ブレーキを踏んでも止まらないからといってエンジンスイッチを切ると、電気系統が全て止まってしまうため、トラックが完全に停止するまではエンジンを止めないこと。

②高速道路

高速道路で車両事故が発生した場合は、
1.ハザードランプを点滅させて走行し、できるだけSAかPAまで走行して停止
2.たどり着けない場合は、急ブレーキをかけずに緩やかに減速して、路肩や非常駐車帯に停止し、発煙筒や停止表示機材で後続車に存在を知らせ、非常電話若しくは、道路緊急(#9910)で通報しましょう。
 

非常電話は1km(トンネル内は200m)ごとに設置されています。受話器をとると道路管理センターにつながります。

故障の内容や停車場所(キロポスト)など通報してください。
交通管理隊が出動、情報板へ掲示され二次的事故の防止措置が図られます。
※車両の不調に気づいた時点でただちに会社に通報することです。

交通管理隊とは、NEXCO等の道路管理者の下で、道路を定期又は臨時に巡回し、道路の安全と円滑な交通の確保を図ることを業務とする組織です。
24時間365日、高速道路の巡回や緊急対応を行っています。

③運行遅延時の対応

運行計画に基づいて出発しても、様々な理由により到着時間が延期される場合があります。原因は様々ですが、適切に対応しないと荷主からの信用を失いかねません。
遅延の原因としては、出発の遅れ・交通事故・車両故障・異状故障・交通規制・交通渋滞・体調不良などが考えられます。
遅延するとわかった時は、事務所へ連絡し指示を受けましょう(どうするのか?運行管理者から指示を受ける)。また、事前に運行管理者とどのように対応するか決めておきましょう。
自分で判断しないこと!無理な遅延回復運転を行ってはなりません。

④非常信号用具【発煙筒】

非常信号用具には、赤色懐中電灯と発煙筒の2種類(有効期限が4年切れた発煙筒は、劣化して点火しないことがある)があります。
車には、いずれかを搭載しておく必要があります。的確な非常信号用具の使用ができるように訓練しておきましょう。
発煙筒の使用手順
①本体をひねり外キャップを外す。
②擦り薬がついた外キャップと本体をこする。
③擦るときは本体を前方に向ける。
④着火する。

⑤消火器の取り扱い【消火器】

設計標準使用期限は、製造より10年です。10年を経過した消火器は交換又は、耐圧性能点検(水圧試験)を実施する必要があります。ドライバーは、消火器が車両のどこにあるのか確認しておきましょう。また、消火器の取り扱い方法を知っておきましょう。
消火器の使用手順
①安全ピンを上に引き抜く。
②ホースを外し、ホースの先端を持って火元に向ける。
③レバーを強く握って放射する。

⑥負傷者の救護はドライバーの義務

交通事故を起こした時は、ドライバーには負傷者の救出や安全な場所への移動、119番への通報などが義務付けられています。
救急車が到着するまでの間に止血・心肺蘇生などの可能な応急救護処置を行うことは大切です。もし、心肺停止の人に何もしないで救急車が来るのを待ったとすると、その人が助かる確率は大幅に低下します。
★応急救護処置の手順を身につけておくこと。

◆応急救護処置の訓練を受ける

①応急手当

応急手当一次救護処置としては、負傷者の声をかけて反応がある場合は、状況に応じて止血などの応急手当てを行います。
反応がない場合や、呼吸をしていない場合心肺蘇生やAED(自動体外除細動器)を用いた処置など一次救命処置を行います。

②第一次救命処置

専門家の指導を受ける
現在の自動車教習所での教習課程の中には、応急救護処置講習が組み入れられています。しかし、心臓マッサージやAEDを用いた除細動は、一度受講した程度では、いざという場面で自信を持って処置することは難しい面があります。

日本赤十字社や各地の消防署などが実施する講習を受講して、専門家の指導を受けることが肝要です。

Ⅱ自然災害の発生に備えた対応

◆異常気象

①異常気象とは

大風、大雨、大雪、暴風雨、豪雪、濃霧などの自然環境が変化すると、普段通りの安全運転ができなくなります。
異常気象とは、このような非常事態のことを言います。

②豪雨時の対応

危険が想定される運行ルートは避ける近年、1時間に50ミリ以上の降水量となる集中豪雨の発生件数は増加傾向にあります。こうした非常に厳しい雨に見舞われると
①視界不良による交通事故
②出水による通行不能、道路崩壊
③河川の氾濫や土砂崩れによる車両の埋没、転落が発生します。
こうした危険が想定されるルートは通行を回避して安全な場所で待機することが必要です。冠水するおそれがあるアンダーパスや地下トンネルなどの通行は避けましょう。
トラックだから大丈夫と思わないことです。万一の水没に備えて脱出用のハンマーを用意しておきましょう。

③豪雪時の対応

■事前準備

雪道では、普通の道に比べて燃料消費が早くなります。マイナス10数度にもなる気温で燃料切れを起こすと生命の危機に直面することもあります。出発前に燃料を満タンにして早めの給油を心がけましょう。タイヤチェーンの準備と装着確実なチェーンの装着を行うために、事前に装着練習をしておきましょう。

■チェーン規制

勾配5%以上の上り坂で渋滞が多く発生しています。要注意です。
チェーン規制の標識のある区間では、スタッドレスタイヤ等の冬用タイヤであっても、チェーンを装着していない車両は通行できません。

■ロープによるけん引

けん引ロープはあるものの、フロント・けん引用フックの場所が分からないと、(フロントバンパーの内側など、カバーで覆われ、通常の状態では見えない場合がある)立ち往生してしまいます。自車のけん引ポイントを一度確認しておきましょう。

◆地震

①地震発生時の措置

警戒宣言や緊急地震速報が出された時
警戒宣言は、大規模な地震発生のおそれが迫っている時、内閣総理大臣が警戒宣言を発することになっています。現在、東海地震に関して静岡全域と東京、神奈川、山梨、長野、岐阜、愛知、三重の7都県の一部が強化地域に指定されています。
警戒宣言が出された場合のドライバーの措置
津波から避難するためやむを得ない場合を除き、避難のために車を使用してはなりません。
緊急地震速報が出された場合のドライバーの措置
ハザードランプをつけるなどして周囲の車に注意を促した後、急ブレーキを避けて、緩やかに速度をおとしましょう。

運転中に大地震が発生した時
①急ハンドル、急ブレーキを避け、できるだけ安全な方法により道路の左端に停止させる。
②カーラジオなどにより地震情報や交通情報を聞き、その情報や周囲の状況に応じて行動する。
③引き続き運転する時は、道路の破損、信号機の作動停止、道路上の障害に十分注意する。
④車を置いて避難する時は、できるだけ道路外の場所に移動しておくこと、やむを得ず道路上に置いて避難する時は、道路の左端に寄せて駐車し、エンジンを止め、エンジンキーは付けたまま、窓を閉め、ドアはロックしない。
⑤駐車する時は、避難する人の通行や災害応急対策の実施の妨げる場所には駐車しない。
以上5つが大地震発生時の対応です。

運転中以外の場所で大地震が発生した時
①津波から避難するためやむを得ない場合を除き、避難の為に車を使用しない。
②津波から避難する為、やむを得ず車を使用する時は、道路の破損、信号機の作動停止、道路上の障害物など十分注意して運転すること。
この2つのことを状況に応じて判断しましょう。

災害対策基本法による交通の規制が行われた時
災害対策基本法により、災害が発生、または発生しようとしている都道府県において、災害応急対策が的確かつ円滑に行われるようにするために緊急通行車両以外の車両の通行が禁止されるか、制限されます。

①道路の区間を指定して交通の規制が行われた時は、規制が行われている道路の区間の場所へ移動
②速やかな移動が困難な時は、車をできるだけ道路の左端に沿って駐車し、緊急通行者車両の通行の妨げにならないように駐車
③警察官の指示を受けた時は、その指示に従って車を移動、または駐車する。
以上の措置をドライバーはとらなければなりません。

以上で8.危険の予測及び回避並びに緊急時における対応方法は終了です。小テストで確認しましょう。

それでは、次の項目を学んでいきましょう!

長さ: 10 分

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