⑦トラックドライバーとしての心構え(交通ルールの厳守編)
3)トラックドライバーの心構え
チャプター3 交通ルールの遵守編
目次
安全・環境・輸送品質に配慮した運転
1.飲酒運転の根絶 | 8.緊急自動車や路線バスの優先 |
2.制限速度の順守 | 9.踏切の通行 |
3.交差点通行 | 10.高速道路の走行 |
4.車間距離の保持 | 11.下り坂・カーブ・トンネルの走行 |
5.あおり運転の禁止 | 12.信号の順守 |
6.スマートフォン等の使用運転禁止 | 13.道路標識・道路標示の順守 |
7.歩行者等の保護 | 14.駐車・停車 |
1.飲酒運転の根絶
■ 飲酒運転は、重大事故の原因となる極めて危険な犯罪行為
アルコールには、少量でも脳を麻痺させる力があります。
脳が麻痺することで視聴覚機能が低下し、注意力や判断力を鈍らせます。
結果、正しい運転操作や正しい安全判断ができない状況になり事故につながります。
事故を起こさない場合でも懲役や罰金の刑事処分の対象となり、免許取り消しや停止の行政処分を受けます!
■ 二日酔いでも処分
二日酔いでも酒気が残っていれば、「酒気帯び運転」となります。
処罰の基準は「呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上」のアルコールです。
基準値以下の場合であっても違反行為となります。
2.制限速度の遵守
■ 高速自動車国道ではトラックの種別で最高速度が異なる
★法定速度
【一般道路】 トラックの種別を問わず60km/h
【高速自動車国道】100km/hと80km/hに区分
※中型トラックの場合、車両総重量・最大積載量によって2つに分かれる
■自動車専用道路の速度
★規制速度
標識や標示により指定された最高速度
※気象状況や道路工事の時は「速度規制」が出るので速度標識に注意して走行すること
高速道路には「高速自動車国道」と「自動車専用道路」がある
※自動車専用道路の制限速度は「一般道」と同じ
3. 交差点通行
■ 交差点の右左折時は徐行
★事故の起こりやすい右左折時は「徐行」が義務付けられている
★「徐行」とは、横断歩道の手前で余裕をもって停止できるよう進行すること
■ 右折車より直進車や左折車が優先
★たとえ自車両の方が先に交差点に入っていても直進車や左折車の進行を妨げてはいけない
■ 信号機の無い交差点の通行
★交差する道路が優先道路の場合、徐行して進行する車両を妨げてはならない
★道幅が同じような道路の交差点では、左方からくる車両の進行を妨げてはならない
4. 車間距離の保持
■ 前車が急停止しても追突しないだけの車間距離をとる
★トラック事故の特徴に追突が多い
追突事故を防止するために大きなポイントが車間距離の保持!
■ 意識して車間距離をとる
★車間距離の目安
【一般道路の場合】
速度計の数字から15を引いた数字
【高速道路の場合】
走行速度をメートルに置き換えた数字
トラックは運転席が高いために車間距離が実際より長く詰めてしまうしまう傾向があります。
5.あおり運転(妨害運転)の禁止
■ 悪質・危険なあおり運転
「あおり運転」とは、車間距離を異常に詰めたり、相手を執拗に追い回したり、パッシングをするなど相手の運転を妨害すること
道路交通法改正により「妨害運転」と規定(令和2年6月30日施行)
※プロドライバーにとって「あおり運転」はあってはならないこと!
■ 道路交通法「妨害運転」の内容
6.スマートフォン等の使用運転の禁止
■スマホ等の使用運転の危険性
・通話すると顔は前を向いていても、
前方はよく見えていない状態になる
・画面を操作すると、目線が画面に集中することで、前方への注意が大きく低下し、的確なハンドルやブレーキ操作ができなくなる
■ スマホ使用時は安全な場所で停止時に行う
使用時は、PA(パーキングエリア)やSA(サービスエリア)、道の駅の駐車場など安全な場所に止めてから操作すること
スマホを使用しながらの運転は、罰則が科せられます
★走行中は電源を切るか、マナーモードやドライブモードに!
7.歩行者などの保護
■ 歩行者との安全な間隔をとる
歩行者や自転車の側方を通過する時は、安全な間隔をあけるか、徐行する
■ 横断歩道接近時の注意事項
①歩行者等がいないことが明らかな場合
→そのまま進行
②横断する歩行者等がいるかいないか明らかでない場合
→横断歩道の手前、停止線がある場合は停止線で停止できる速度で進行
③歩行者等が、横断していたり、横断しようとしている場合
→横断歩道の直前で一時停止して、歩行者や自転車の進行を妨げてはならない
④横断歩道の直前に車が停止している時
→その車のかげに横断しようとしている歩行者や自転車がいる可能性がある
その車の側方を通過し、停止車両の前方に出る前に一時停止して、横断者の安全を確認する
■ 幼児や高齢者などの保護
幼児や高齢者の歩行者がいる場合、一時停止か徐行して通行を妨げてはならない
■ 歩道を横切る時
歩道や路側帯を横切る時は、その手前で一時停止しなければならない
■ スクールバスの側方通過時
バスの側方を通過する時は、徐行して安全を確かめながら通行すること
■ 表示自動車を保護する義務
★表示自動車
・初心運転者標識
・高齢運転者標識
・聴覚障害者標識
・肢体不自由運転者標識
・仮免許運転者標識
※表示運転者への幅寄せ、割込み禁止!
8.緊急自動車や路線バスの優先
■ 緊急自動車の優先
★緊急自動車が接近して来た時は、緊急自動車の通行を妨げてはならない
①交差点やその付近では、交差点を避けて道路の左側に寄って一時停止しなければならない
②交差点やその付近以外の場所では、道路の左側に寄って進路を譲らなければならない
③一方通行で、左側に寄ると緊急自動車の通行の妨げとなるような場合は、右側に寄って進路を譲る
■ 路線バスの優先
路線バスの専用通行帯では、原付バイクや軽車両は通行できるが、それ以外の車は、緊急自動車に進路を譲る時や右左折など、やむを得ない場合を除いて通行できない
優先通行帯の場合は、路線バス以外の車も通行できるが、路線バスが接近した時は、速やかに出なければならない
道路の混雑により、出られなくなる恐れがある場合は、左折などを除き優先通行帯に入ることはできない
9.踏切の通行
■ 踏切事故は重大事故につながる
★車体の大きいトラックが踏切で列車と衝突すれば、多くの死傷者を伴う重大事故につながる
★一時停止と安全確認
・前車に続いて踏切を通過する場合でも、一時停止して安全確認する
・踏切に信号機が設置されていて青信号の場合は、一時停止せずに踏切を通過することができるが、この場合でも左右の安全確認はしなければない
■ 踏切に進入してはならない場合
①警報機が鳴り始めた時、遮断機が降り始めたり、降りている時
②踏切の先の道路が渋滞などにより混雑している時、踏切に進入する前には、必ず踏切の先の道路状況を確認すること!
道路スペースがなく、踏切内で停車する可能性がある場合は、絶対に踏切に進入してはならない!
■ 踏切の通行方法
①エンスト(エンジンがストップすること)防止のため、踏切内では変速せず、発進時の低速ギアのまま通過する
②歩行者等や対向車に注意しながら、踏切内にタイヤが脱落しないようやや中央寄りを走行する
■ 踏切内で動きが取れなくなった時の措置
①警報機のある踏切では、警報機の柱などに取り付けられている押しボタン式の踏切支障報知装置(非常ボタン)を使う
※危険を回避するために非常ボタンを押したことで損害賠償請求がなされることはない
②踏切支障報知装置がない場合は、車に備えている発煙筒を使用する
※発煙筒の使い方、発煙筒の備え付け場所の確認を!
③発煙筒が無い場合は、煙の出やすいものを付近で燃やして列車に合図する
10.高速道路の走行
■ 車両の点検が重要
走行中に、燃料、冷却水、エンジンオイルの不足で車両が停止することないよう運行前点検を!
■ 積荷の点検
高速走行での荷物の転落、飛散は非常に危険!前もって荷物を積み直し、必要な措置をとること
■ 通行区分の遵守
路肩や路側帯を走行しないこと。
一番右側の車両通行帯は、追越しのために空けておき、走行車線のやや左側を走行します。
トレーラは、高速自動車国道においては一番左側の車線を走行します。
■ 高速走行時に発生しやすい危険な現象
★ハイドロプレーニング現象
ハイドロプレーニング現象とは、雨天時に高速で走行するとタイヤが浮いてハンドルやブレーキが効かなくなり走行安定性が失われること
※雨天時に高速道路を走行する時は規制速度を守り、スピードを出し過ぎないこと!
★スタンディング・ウェーブ現象
スタンディング・ウェーブ現象とは、
走行時にはタイヤは変形して回転しているが、高速で回転するとタイヤの表面温度が上昇して変形が回復しにくくなりタイヤが波打つこと
※この現象はタイヤの空気圧が低いと起こりやすいので、高速道路を走行する場合は空気圧を特にチェックをすること!
11.下り坂・カーブトンネルの走行
■ 下り坂はブレーキが効かなくなる「フェード現象」に注意
フットブレーキを使い過ぎると、ブレーキライニングが過熱して摩擦力が低下し、ブレーキが効かなくなります。
※長い下り坂を走行する時は、低速ギアによるエンジンブレーキや排気ブレーキを活用し、フットブレーキの多用は避けましょう。
■ ハンドルを切り返すS字カーブは横転しやすい
カーブでは遠心力が働くため、スピードを出し過ぎると路外に飛び出したり、横転する危険がある
※車高が高いトラックは、横転しやすい特性を十分に認識しておくこと!
■ トンネルでの事故は重大事故につながる
・高速でトンネルに入ると視力が急激に低下する
・トンネル内の渋滞に注意し、情報板で交通状況の把握に努めること
・信号のあるトンネルでは、必ず信号に従う
・照明設備のあるトンネルでもヘッドライトを点灯!
・トンネルの入口と出口では天候が変わっていることがあるので、出口に接近した時は、天候や道路状況に注意する
12.信号の遵守
■ 黄信号は原則「停止」
黄信号は、停止位置に近づいているために安全に停止できない場合(急停止になって後続車に追突されるおそれがある場合)を除いて、交差点の手前で停止すること
■ 赤の点滅信号は「一時停止」
赤の点滅信号では、車両は停止位置で一時停止し、安全確認しなければ進行できません。
■ 右折矢印信号
対面する信号が赤でも、青色の灯火の右折矢印信号が表示されている場合には、右折及び転回することができます。
13.道路標識・道路標示の遵守
■ 道路標識と道路標示
★道路標識とは、交通規制などを示す標示板のこと。 規制標識、指示標識、警戒標識、案内標識がある
★道路標示とは、ペイントや道路鋲などで路面に描かれた絵や記号、文字などで「規制標示」と「指示標示」がある
■ 道路標識や道路標示は運転にとって重要な情報源
速度規制標識や標示、「横断報道や自転車横断帯あり」の標識や標示は、危険を知らせてくれる重要な情報源になります。
14.駐車・停車
■ 駐停車の禁止場所
★駐停車する時は、駐車や停車の禁止場所でないか確認する
★駐車が禁止されていない道路でも、駐車してはならない「無余地駐車の禁止」があります。
駐車する場合には、その車の右側に3.5m以上の余地が必要であり、とれない場所での駐車はできません。
★ただし貨物の荷卸しを行う場合で、運転者が車を離れない時や、離れてもすぐに運転できる場合は駐車することができます。
■ 高速道路での駐停車
高速道路では、故障などやむを得ない事情がある場合を除いて駐停車が禁止されています。
高速バスの停留所も、高速バス以外の車はバスの運行時間外であっても駐停車できません。
■ 一般道路のバス停留所
半径10m以内のエリアに入る車道は、反対車線であっても駐禁の対象となります。
駐車と停車の中の、駐車や停車もしてはいけない場所として、バス、路面電車の停留所の標示板(標示柱)から10m以内の場所は、運行時間中に限り駐停車できません。
■ 駐車・停車の方法
★人の乗降や貨物の積卸しのために停車する時は、できるだけ道路の左側端に沿うとともに他の交通の妨害にならないようにすること
★歩道や路側帯のない道路に駐車する時は、道路の左側端に沿うとともに、他の交通の妨害にならないようにすること
★歩道のある道路では、車道の左側端に沿うこと
★路側帯のある道路では、
①路側帯の幅が0.75m以下の場合は車道の左端に沿い、
②路側帯の幅が0.75m超の場合は路側帯の中に入り、
左側に0.75m以上の余地をあけます。
■ 駐停車できない路側帯
【歩行者用路側帯】
【駐停車禁止路側帯】
路側帯の幅が0.75mを超える場合でも、白の2本の実践の標示(歩行者用路側帯)や白の実践と破線の標示(駐停車禁止路側帯)のある場所は、路側帯の中に入ることはできません。
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安全・環境・輸送品質に配慮した運転を順守しよう!
それでは、次の項目を学んでいきましょう!