④義務を果たさない場合の影響
この項目では、2)義務を果たさない場合の影響の把握Ⅰ~Ⅳについて学びましょう。
Ⅰ運転者に対する刑事処分
■違反や事故に対する3つの責任
・刑事上の責任:社会秩序の維持
道交法で定める「懲役や罰則」が適用になります。
・民事上の責任:被害者の損害を補償し金銭により現状回復を図る
人身・物損を問わず、民事裁判の手続きによって、損害賠償の判決が言い渡されます。(自賠責の限度額を超えると人身・物損の担保はありません。)
・行政上の責任:道路交通法の安全の確保
公安委員会は、交通事故・違反があると、免許証の停止や取消しを行います。
交通違反や交通事故を起こしたドライバーに科せられるペナルティには、刑事上の責任・民事上の責任・行政上の責任の3種類があります。
公安委員会は、交通事故・違反があると、免許の取り消し・停止等の規定に基づいて、ドライバーの運転免許の停止や取り消しを行います。これが行政処分です。
刑事上の責任
「危険運転致死傷罪」
飲酒運転・スピード違反・あおり運転・信号無視・高速道路、一方通行逆走等
懲役15年以下の懲役
「過失運転致死傷罪」
7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万以下の罰金
アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させて人を死傷させると「危険運転致死傷罪」が適用され、15年以下の懲役となります。
自動車の運転上必要な注意を怠り人を死傷させた場合は、「過失運転致死傷罪」が適用され、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万以下の罰金となります。
「ひき逃げ」事故を起こし被害者が死傷した場合は「10年以下の懲役又は100万円以下の罰金となります。
Ⅱ運転者に対する行政処分
民事上の責任
事故の被害者から訴訟提起されると、民事裁判の手続きによって損害賠償の判決が決まる。
自賠責保険金が被害者の損害の一部を保証するが、自賠責の補償限度を超える人身損害や物損については、担保されない。
訴訟提起(そしょうていき)とは…裁判するため問題を持ち出すこと。
事故の被害者から訴訟提起(裁判するため問題を持ち出すこと)され、民事裁判によって損害賠償の判決が決まった場合、人身事故の損害賠償を保証する制度としては自動車損害賠償保障法があり、自賠責保険が被害者の損害の一部を保証します。
自賠責の補償限度を超える人身損害や物損については、任意自動車保険に加入していないと担保されません。
Ⅲ会社に対する行政処分
行政上の責任
●酒酔い運転、麻薬等運転、救護義務違反(ひき逃げ)は、1回の違反でも3年間の免許取り消し
●酒気帯び運転(呼気1リットルにつき0.25ml以上)と過労運転は、基礎点数25点が付けられ、2年間の免許取り消し
●交通事故を引き起こすと、違反点数に加えて、事故の種別や責任程度に応じた点数(付加点数)がつけられる
死亡事故を起こした場合は、責任が軽くても13点が付けられる。(違反点数と合計15点で免許取り消し)
免許の取り消し等の規定に該当すると、即、運転免許の停止や取り消しとなります。また、事故の種別や責任の程度に応じた付加点数が付けられます。死亡事故を起こした場合は、たとえ責任が軽くても(相手に非がある場合)13点が付けられます。違反点数と合計して15点以上となると免許取り消しとなります。
●「累積点数制度」
交通事故・違反については「累積点数制度」もあります。
交通事故や交通違反に対して一定の点数をつけ、過去3年間の合計点数が所定の基準に達した場合に運転免許の停止又は取消し処分を行う制度です。
■道交法や民法上の責任
ドライバーが業務中に交通違反を犯した場合、事業者は両罰規定の適用を受ける。
■貨物自動車運送事業法上の責任
貨物自動車運送事業法では、事業者の「事業の全部又は一部の停止(自動車等の使用停止含む)と「事業許可の取り消し」について規定している。
事業者は、従業員の選任と事業の監督に注意を怠らなかったことを証明しない限り、損害賠償責任を免れることはできません。ドライバーが業務中に有責の交通事故を起こせば、事実上、事業者の免責を許さない規定となっています。
■事業停止
事業停止とは、悪質または重大な法令違反を犯したときに、一定期間運送行為を行うことができなくなる行政処分
•運行管理者の未選任
•整備管理者の未選任
•全運転者に対して点呼未実施
•監査拒否、虚偽の陳述
•名義貸し、事業の貸渡し
•乗務時間の基準に著しく違反
•全ての車両の定期点検整備が未実施
事業停止とは、悪質または重大な法令違反を犯したときに、一定期間運送行為を行うことができなくなる行政処分です。悪質または重大な法令違反とは運行管理の未選任・整備管理者の未選任・全運転者に対して点呼未実施・監査拒否、虚偽の陳述・名義貸し、事業の貸渡し・乗務時間の基準に著しく違反・全ての車両の定期点検整備が未実施の行為を言います。
■貨物自動車運送事業法上の責任
貨物自動車運送事業法違反を行った事業者に対し、自動車の使用停止を命じる度に「使用停止日数10日車(車両数×日数)までごとに1点」を与え、3年間の点数を累積して
①20点を超えると事業者名公表
②50点を超えると違反営業所の事業の全部・一部の停止
③80点を超えると事業許可取り消し
★重大事故を引き起こした場合は、特に厳しいものになる。
貨物自動車運送事業法では、事業者の「事業の全部又は一部の停止(自動車使用停止含む)」と「事業許可の取り消し」について規定しています。自動車の使用停止を命じる度に「使用停止日数10日車(車両数×日数)ごとに1点」を与え、3年間の点数を累積して①20点を超えると事業者名公表②50点を超えると違反営業所の事業全部・一部の停止③80点を超えると事業許可取り消しという制度です。重大事故を引き起こした場合には、運転者・事業者への刑事処分・行政処分等の罰則は特に厳しいものになります。
◆違反者本人と事業者の両方を罰する(両罰規定)
運転者や運行管理者等が、業務を行うに際して違反行為を行った場合には、違反者本人だけでなく事業者(会社)にも罰金や科料が科せられる。
「両罰規定」
・過積載・積載方法制限超過
・制限外許可条件違反(3トン規制等)
・整備不良・運行記録計不備
・違反行為の下命・容認
運転者や運行管理者が、業務を行う際にして違反行為を行った場合、事業者にも罰則や科料が科せられることがあります。
※科料とは、一定の金額を剥奪(はくだつ)することを内容とする財産刑の一つ。1000円以上1万円未満とされています。
軽い犯罪に科する。違反者本人と事業者の両方を罰するという意味から「両罰規定」と呼ばれています。
■速度超過や過労運転、酒気帯び運転等は、それ単独では両罰規定の対象にはならないが、違反行為の下命・容認に該当すれば、(両罰規定)の対象となる。
★過積載や積載方法制限超過については、下命・容認に該当しなくても両罰規定の対象となる。
すべての違反行為が対象となるわけではなく、主なものを上げてみると、過積載・積載方法制限超過・制限外許可条件違反・整備不良・運行記録計不備・違反行為の下命・容認。したがって速度超過や過労運転、酒気帯び運転などは、それ単独では両罰規定の対象にはなりませんが、下命・容認に該当すれば両罰規定の対象となります。一方、過積載や積載方法制限超過については下命・容認に該当は勿論ですが、そうでない場合でも両罰規定の対象となります。
Ⅳ重大事故を引き起こした場合の罰則及び加害者・被害者心理
東京交通安全協会のホームページでは、重大事故を引き起こした加害者の手記が公開されています。
インターネットで「交通事故 手記」で検索すると、各県警のホームページで被害者の方々の手記が紹介されています。
よく読んで、交通事故の被害者及びその遺族の置かれた境遇を知り、交通事故が直接の被害者だけではなく、遺された方々にどのような悲惨な影響を与えるかをしっかり認識し、絶対に事故を起こしてはならないことを理解しましょう。
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この章はここまで。 小テストに取り組み、次の項目を学びましょう!