①トラック輸送の現状

1.事業用自動車を運転する場合の心構え

初任ドライバー安全教育12項目の1つ目、事業用自動車を運転する場合の心構えについて学んでいきましょう。この項目で学ぶ内容は3つです。

1)トラック輸送の現状と社会的役割について
2)トラックによる交通事故の実態と社会に与える影響について
3) トラックドライバーの心構えについて

1)トラック輸送の現状と社会的役割 チャプター1】トラック輸送の現状

貨物輸送の指標は2つ

貨物輸送は、トラックをはじめ、航空、鉄道、海運などの手段を使って運ばれています。そして、貨物輸送を数字で見る際には、大きく2つの指標が使われています。
1つ目の指標は、輸送トン数というものです。これは、輸送した貨物の実際の重量、トン数の合計のことです。

2つ目の指標は、輸送トンキロ数というものです。輸送した貨物の重量にそれぞれの輸送距離をかけて表します。例えば、10トンの貨物を10km運んだ場合は、100トンキロという表現をします。
この輸送トンキロという指標は、経済活動としての輸送を的確に表すには、どれくらいの重量の貨物を、どれくらいの距離を運んだか?で比較するために使われています。
そのため、貨物輸送量を表す際は、トン数とトンキロ数を並べて表示されるのが一般的です。

トラック輸送の形態

トラックでの輸送には2種類の形態があります。
1つ目は、営業用トラックと言われるもので、緑色のナンバープレートをつけているトラックのことです。営業用トラックは、トラック運送事業者が保有しており、他の人の貨物を料金をいただいて輸送するトラックのことをいいます。

2つ目は、自家用トラックで、白色のナンバープレートをつけているトラックです。自家用トラックは、商用ではなく自分自身の貨物を輸送するためのトラックです。

トラック輸送の現状をデータで見ていきましょう。

①輸送機関別の輸送量

全日本トラック協会が出している輸送機関別の輸送量を輸送トン数でみてみると、平成30年度の国内貨物の総輸送量は、年間約47億トンとなっています。その内、トラックによる輸送量は、年間約43億トンで、輸送量全体の91.6%と9割以上を占めていることが分かります。いかに、トラックによる輸送量が多いかが分かります。

次に、輸送トン数の推移を見てみると、平成8年までは自家用トラックでの輸送が、事業用トラックよりも多かったのが、平成9年に逆転していることが分かります。それ以降、自家用トラックでの輸送は年々、減少しているのに対し、営業用トラックは横ばいで推移しています。

今度は、輸送トンキロ数でみてみると、平成30年度の国内貨物の総輸送量は、年間4090億トンキロとなっており、その内、トラックによる輸送量は、2010億トンキロで、全体の51.3%になっていることがわかります。
実際の輸送トン数では、航空、鉄道、海運を合計しても全体の8.4%にしかすぎませんが、トンキロ数でみると、輸送距離の長い航空、鉄道、海運が48.7%を占めています。

輸送トンキロの推移では、平成6年から平成17年までは、内航海運が多かった輸送トンキロを、平成18年には、営業用トラックが逆転し、移行は、同じトンキロ数で推移していることがわかります。輸送トンキロ数で見ても、営業用トラックが重要な役割を担っていることがわかります。

②トラック車両数の割合

トラックの保有台数を見てみましょう。国内のトラック登録台数は、約769万両です。そのうち、営業用トラックが、148万台で19.3%。自家用トラックが、621万台で80.7%となっています。いかに自家用トラックの方が多いかがわかります。

 

③トラック輸送の分担率

次に、営業用トラックが運んでいる輸送量と自家用トラックの輸送量の割合を見てみましょう。まず、輸送トン数では、営業用トラックが、輸送量全体の70.4%を占めています。

また、輸送トンキロ数では、 営業用トラックが、輸送量全体の87.1%を占めています。

以上のように、営業用トラックの車両数は、トラック登録数の19%程度にしかすぎませんが、輸送トン数では7割、輸送トンキロでは9割弱と輸送力の高さがうかがえます。

④輸送効率の比較

さらに、実働1日1車あたりの輸送トンキロをみると、営業用トラックは自家用トラックの約9倍の輸送効率を示しています。今後、環境問題への対策や消費エネルギー削減、積載率向上の観点からも自家用トラックから営業用トラックへの転換が進んでいくことでしょう。

⑤品目別輸送トン数の構成比

営業用トラックと、自家用トラックの品目別輸送トン数の構成比をみてみると、自家用トラックでは、建設関係貨物が65.6%と大半を占めるのに対し、営業用トラックでは、農水産品、食料品、日用品などの消費関連が39.9%、金属、機械、石油製品などの生産関連が38.9%、木材、砂利、石材などの建設関連が21.2%と営業用トラックは運ぶものもさまざまです。

⑥トラック運送事業の市場規模

国土交通省の、物流業の事業分野別、営業収入によると、トラック、鉄道、海運、航空、倉庫など国内の物流事業の市場規模は約27兆円になります。その内、トラック運送事業の市場規模は、約16兆円であり、全体の約6割を占めています。

国内の主要な物流企業の売上高は、令和3年3月期で、日本通運が2兆792億円で1位、2位がヤマトホールディングスで1兆6959億円、3位のSGホールディングスが1兆3120億円、4位が、日立物流で6524億円、5位、近鉄エクスプレスが6091億円、6位、セイノーホールディングスが5920億円となっています。

⑦トラック運送事業者数

平成2年の貨物自動車運送事業法の施行で、トラック運送事業の規制緩和が行われました。
その後、新規参入者が急増し、平成2年度では、40,000社だった事業者数が平成19年度のピーク時では、1.5倍の63,000社になりました。
しかし、輸送量が伸び悩む中、事業者間の競争が激化し、新規参入者が減少し、現在では62,000社で推移しています。

⑧トラック運送事業者の規模

平成30年3月末のトラック運送事業の規模別事業者数を見ると、車両数10両以下事業者が全体の約半数、さらに、20両以下だと全体の約8割を占めており、小規模のトラック運送事業者が多いことがわかります。逆に、車両数が501両以上の大規模事業者は、84社と0.2%にすぎません。

この章のまとめ

 ①輸送機関別の輸送量
  国内貨物輸送量のトラック輸送が占める割合は、輸送トン数で全体の約9割以上、
  輸送トンキロ数で約5割以上輸送量において国内輸送の重要な役割を担っている。

 ②トラック車両数の割合
  国内トラック車両数、約769万両の内、営業用が約2割、自家用が約8割。

 ③トラック輸送の分担率
  トラック輸送量の内、営業用トラック輸送量は、トン数では約7割、トンキロ数では約9割を占める。

 ④輸送効率の比較
  実働1日1車あたり輸送トンキロを見ると、営業用トラックの輸送効率は自家用の約9倍。

 ⑤品目別輸送トン数の構成比
  自家用の輸送品目の大半が、建設関係貨物であるのに対し、営業用の輸送品目はさまざまです。

 ⑥トラック運送事業の市場規模
  国内の物流事業の市場規模は約27兆円。
  その内、トラック運送事業の市場規模は約16兆円で約6割を占めています。

 ⑦トラック運送事業者数
  平成2年度の貨物自動車運送事業法による規制緩和で、新規参入事業者が増加し、
  現在は約62,000社で推移しています。

 ⑧トラック運送事業者の規模
  車両数10両以下の事業者が全体の約半数を占め、20両以下になると全体の約8割を占めています。
  小規模のトラック運送事業者が多くなっています。

YouTube動画版はこちら↓

今回はここまで。小テストに取り組んでください。
次は、トラック輸送の社会的重要性について学びましょう!

長さ: 10 分

戻る: 初任ドライバー安全教育 > 1.事業用自動車を運転する場合の心構え